30代を折り返した今、ふと思う。
「なぜ俺は、こんなにも情けない人生を歩んでしまったのか?」と。
転職15回以上、パチンコに狂って借金満額、ホストを飛び、夜の世界を彷徨い、元ヤクザだらけの建設会社から逃げ出し……。
気づけば今、軽自動車のハンドルを握りしめて汗を流す「限界配達員」をやっている。
最初からこうだったわけじゃない。
小学生の頃の俺は、どこにでもいる「プロサッカー選手」を夢見る純粋な少年だった。
だが、中学に上がると周りのレベルの高さに圧倒され、心のどこかで限界を感じていた。それでも「諦めた」と認めるのが怖くて、惰性でボールを蹴り続け、そこそこの強豪チームでレギュラーにしがみついていた。
思えば、これが俺の「現実から目を背ける人生」の始まりだったのかもしれない。
人生の歯車が狂った「合格発表の日」
最大の分岐点は高校受験だった。
当時の俺は、決してグレていたわけじゃない。
ただ、いつも何かしら問題を起こすような悪ガキグループの端っこにいて、勉強なんてまるでしていなかった。当然、学力は底辺。
進学の選択肢は2つしかなかった。
1つは、学力は中の下だがサッカー環境が良い「第一志望の高校」。
もう1つは、地域中の本物の不良が集まると悪名高い「底辺ヤンキー高校」。
サッカーを続けるため、俺は必死で上の高校を目指した。
そして、合格発表の当日。
掲示板の前に立った俺の目に飛び込んできたのは、無情にも「不合格」の文字だった。
受かったのは、あの不良高校。
頭が真っ白になり、足元から崩れ落ちそうになった。
「あんな本物のワルが集まる学校で、俺は無事に生きていけるのか……?」
絶望だった。
だが皮肉なことに、この高校での3年間が、その後の俺の立ち回り、言動、そして「見栄とハッタリで塗り固めた人格」を決定づけることになる。
生き残りをかけた「高校デビュー」の心理戦
今振り返れば、ただのガキのくだらない世界だ。思い出したら顔から火が出るほど恥ずかしい。
だが当時の俺は、「どうすれば舐められずにこの戦場を渡り切れるか」を命がけで考えていた。
多感な時期、少しでも弱みを見せたらカーストの最底辺に叩き落とされる。
入学式前夜、俺は姉に頼み込んで耳にピアスを開け、ズボンを限界まで下げた腰パン姿で校門をくぐった。
だが、教室に入って悟った。
周りを見渡せば、同じような格好をした奴らばかり。
そう、全員が必死に虚勢を張っている「量産型・高校デビュー」だったのだ。
ここで一番重要なのは「見極め」だった。
誰と群れ、どのポジションを取るかで、今後のスクールライフのすべてが決まる。
初日からイキり散らして目立とうとする奴もいたが、メッキなんてすぐに剥がれる。
いきなり隣のクラスの大人しそうな奴を殴りつけた男が、その場でボコボコに返り討ちに遭う光景を見て、俺は「人は見た目によらない」と冷や汗をかきながら冷静に周りを観察した。
そんな中、俺はとんでもない幸運を引き当てる。
隣の席になったのが、他校を退学になって1年ダブりで入学してきたナオキだったのだ。
しかも運が良いことに、前の高校で俺の中学の先輩と仲が良かったらしく、すぐに意気投合した。
1年高校生活を経験しているナオキの情報は、この戦場において最強の武器だった。
そしてある日、そのダブりのナオキがニヤつきながら言った。
「つん、ピアス拡張すりゃいいじゃん。道具やるよ」
当時の教室を見渡せば、誰もが同じ髪型、同じ着こなし。
「その他大勢」から抜け出し、手っ取り早く一目置かれたかった俺は、まだ誰も手を出していなかった「ピアスの拡張」に飛びついた。
友人から貰った拡張器を握りしめ、帰宅後すぐに自分の部屋で作業を始めた。
文字通り、耳たぶの穴を無理やり押し広げる作業。
「……痛っっ!!!!」
激痛で涙が滲む。
だが、「これで周りと差をつけられる」「舐められないポジションに行ける」という浅ましい見栄だけが、俺の手を動かし続けた。
ピアスが好きだからじゃない。
ただ他と違うことをして、注目を浴びたかっただけ。
今思えば、本当にダサくて、情けなくて、恥ずかしい動機だ。
翌朝、俺は何食わぬ顔でゲージアップしたピアスを耳にねじ込み、ドヤ顔で登校した。
自分からは絶対に言わない。「おい、それ耳どうしたの?」と周りに気づかせるように仕向け、狙い通りクラスの視線を集めた瞬間、俺は内心でほくそ笑んでいた。
だが、この浅はかな選択が、地獄の始まりだった。
この日を境に、俺は校内で「ピアスの穴を広げ続けるヤバい奴」という謎のレッテルを貼られてしまったのだ。
引くに引けなくなった俺は、本当は痛くてたまらないし、もう広げたくもないのに、高校3年間ずっと見栄のためだけに耳を拡張し続けなければならなくなった。
誰にも言えない激痛に耐えながら、心の中で泣いていた。
あれから20年以上が経った。
俺の耳たぶには、今も伸び切って決して塞がることのない大きな穴がぽっかりと空いている。
見栄を張り、ハッタリをかまし、本当の自分から逃げ続けた男の、
これが「負の遺産 第1号」である。

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